2014-01-01から1年間の記事一覧

猫の話

家庭医は予防にも力をいれます。 しかし予防というのは中々評価しにくいところがあります。 予防に成功すれば病気が発症しないということになりますが、何も発症しない場合はそれが予防したからなのか、それとも予防しなくても発症しなかったのかは判断しに…

除菌消臭っていうけれど

除菌や消臭をうたった新製品が数多くでています。 新製品は我々に新たな生活習慣を提示します。 もともとはそんなこと考えもしていなかったのに、それがひとたび採用されれば次第にそれがなければ違和感を覚えるようになっていく。 そういった意味ではファブ…

ずっと続いていますを考える

同じ表現でも、人によって伝えたい内容が違うことはよくあります。 診察の場面ではそれをきちんと把握するかでその後の対応が違ってきますので、その人が伝えていることが具体的に何なのかを常に考えるようにしています。 よくあるのは、「ずっとです」とい…

食事しないと食後の薬は飲んだらだめ?

大抵の薬は「食後」の服用が指示されています。 そして多くの場合は朝食後となっていますから、「朝食を食べられなかったから薬を飲んでいません」という人が時々います。 あるいは毎食後の薬を定期的に飲んでいる人が、「食欲がなくて食事がとれていないの…

診断はつかないけど

「時間」がもっとも効果のある薬なのかもしれません。 患者さんが何かに困って受診します。 例えば、熱が昨日からある。37℃台後半の熱だけれど、平熱は35℃台ということもあって結構つらい。熱以外に何か症状がありますか、と聞いても何もない。咳・鼻水はな…

家庭医について:生物心理社会モデル2

生物心理社会モデルは生物医学モデルと逆方向の捉え方もするのでした。 生物医学モデルが人間をより小さい単位で見て病気の原因を解明しようとしたのに対し、生物心理社会モデルは逆にそれをより大きな単位で病気が与える影響や関係性の変化をみようともしま…

家庭医について:生物心理社会モデル

家庭医が病気をとらえる考え方に、生物心理社会モデルという枠組みがあります。 これは生物医学モデルに対比する疾患モデルとして提唱されたもので、1977年にEngelという人が提唱しました。 今回は、生物医学モデルと生物心理社会モデルについて。 まずは生…

クリスマスの件

1歳半の娘がいます。 だからなのでしょう、今年は職場の方から、今年はサンタさんになるんですか?と頻繁に声をかけられます。 なんでも、サンタクロース役になる係を決めて各戸をまわることになっているマンションもあるそうですが…。 サンタさんになる、の…

インフルエンザの診断と検査と私

インフルエンザが流行しています。 インフルエンザの診断には、迅速キットが使われています。鼻の中に細い綿棒のようなものを突っ込んで検査する、あれです。 患者さんは高熱がでて医療機関を受診します。そうすると迅速検査をされ、結果が陽性だとインフル…

かゆい時の過ごし方

かゆいというのは痛いと同じか、ひょっとしたらそれ以上につらい症状かもしれません。 冬になると肌が乾燥してかゆみが出てくる人が増えてきます。 肌の乾燥がかゆみの原因の場合、保湿が最も効果的な治療です。 そして治療と同じように大事なことは、掻かな…

誤嚥性肺炎に立ち向かわない

前回、誤嚥を予防するための食事の仕方について紹介しました。 他にも色々と方法はありますが、それでもそれらは嚥下機能の低下を止めるものではないですから誤嚥を完全に防げるわけではありません。最終的にはこれまでのように食事をすることはできなくなる…

誤嚥性肺炎に立ち向かう

では、この誤嚥性肺炎にどのように立ち向かえば良いのでしょうか。 誤嚥性肺炎に立ち向かうとは、ある意味で加齢に立ち向かうということかもしれません。 もちろん嚥下機能が低下したとしても、誤嚥をおこさないように工夫することはできます。 ひとつは食事…

第3位肺炎2

高齢者の介護をしている人はよくご存知かもしれませんが、この誤嚥性肺炎というのは非常にやっかいな病気です。 …ここからの続きでした。 誤嚥性肺炎とは、唾液等の分泌物や食べ物を誤って気道に吸い込んでしまった結果おこる肺炎のことです。簡単にいうとむ…

第3位肺炎

日本の死因別の死亡数は長らくがんがトップで、次いで心疾患、脳卒中の順でしたが2011年から肺炎が脳卒中を抜いて第3位に浮上しています。特に年齢別にみた死因の割合では高齢になるほどじわじわ肺炎の割合が増えていることがわかります。 これをネットで検…

我が子が一番可愛いという話

診療所には小児もきます。 まだ2ヶ月くらいの乳児から中高生まで、予防接種・乳児健診・感冒・胃腸炎…など様々なきっかけで来院します。 お母さんが連れてくることが多いですね。 子供は可愛いなあと思います。 例えば9-10ヶ月で乳児健診にくる親子。 お子…

最期を迎えるとき2

(前回からの続き) しかし一方でまだまだ足りない部分もあります。 過剰な医療の問題です。 過剰な医療というと、人工呼吸器で呼吸を長らえさせたり、胃瘻で栄養を確保したり、薬で心臓の働きや血圧を維持したりするような比較的高度な医療を想像するかもし…

最期を迎えるとき

人生を飛行機のフライトに例えることがあります。 飛行機は離陸と着陸が一番難しいし、事故も多い。 人生も同様です。生まれるとき、生まれたばかりのときは体は弱く死亡率も高い。 しかしそれは医療の進歩により劇的に改善し、今や母子ともに健康に生まれる…

家庭医の得意とする問題

前回家庭医の診療範囲を取り上げました。 全ての人にとってあらゆる健康問題をまず相談できる医者が家庭医でした。 しかしあらゆる健康問題を…といってもわかりにくいかもしれません。 例を一つ出しましょう。 「最近、よくころぶ」 例えばあなたの夫(ある…

家庭医とは:診療範囲について

ブログタイトルにあるように私は家庭医です。 しかし家庭医と聞いてピンと来る人は極少数でしょう。 ここでは家庭医とは何かというと少しずつ書いていきたいと思います。 医師に専門は何ですか?と聞くとき、多くの人は「○○科です」という答えを期待していま…

葛藤

今回は医療行為をする上での葛藤について。 以前はもっと医療行為とは絶対的なものだと思っていました。 医学的に治療が必要なことは必要だし、この病気であればこの治療をすればよいと決まるものだと思っていました。 患者さんと治療方針を考える?そんなこ…

風邪薬の正体

風邪薬とは風邪を治すのではなかったのか?と思われる方もいるかもしれません。 でも実はそうでもありません。 …という話の続き。 風邪薬は、その原因となるウイルス(病原体)に対して何かしてくれるわけではありません。 たとえば抗生剤であれば、細菌とい…

風邪の正体

寒い日が続いています。 冬になるといわゆる風邪の患者さんは増えます。患者さんの中には「風邪をひいちゃって」といって受診される方も多いです。 しかし、そもそも「風邪」ってなんでしょうか。 患者さんが「風邪」というときに詳しく話を聞くと、その症状…

薬を使わないという選択肢

インフルエンザが流行しています。 私の勤務する診療所でもぼちぼち増えてきています。 インフルエンザ診療で医療者の間でしばしば問題となるが、抗インフルエンザ薬を使うか否かということです。いや、実際には「しばしば」かどうかはわかりません。私の周…

医療機関を受診するとき

今日はどうされましたか? 診察のまずはじめに、医師からこんな言葉をかけられます。 「熱がでちゃって」「咳が止まらないんですよ」「いつもの薬をもらいにきました」 いろいろとあると思います。 これらを主訴(しゅそ)といって、要は患者さんが一番困っ…

便のこと下痢のこと3

(続き) 胃腸炎では脱水にならないようにしっかりと水分を補給することが重要なのでした。 要は下痢によって脱水になることが胃腸炎のもっとも注意すべきことなのです。逆に言うと脱水にさえ注意すればいくら下痢がでようがあとは自然に治まるのを待つだけ…

便のこと下痢のこと2

(前回から続き) 「水分をとるから水のような便が出てしまう。水分をとらなければ下痢は止まるはず」と思って水分をとらないようにしていたという人もいます。 これは前回の記載からの引用ですが、こう考える人は胃腸炎で腸が弱っているために摂取した水分…

便のこと下痢のこと

冬になると胃腸炎が流行します。 診療所では嘔吐下痢の患者さんが増えると今年も冬になったなあと妙な季節感を感じたりするものです。 胃腸炎の典型的な症状は嘔吐と下痢です。 今回はその下痢について取り上げたいと思います。 そもそも下痢って何ですか?…

無症状でも治療をする理由3

前回は以下のような文章で終わりました。 「要は、高血圧で脳卒中のリスクが高くなるのを承知で、多少血圧が高いのは目をつぶり塩分も油も気にせずに豚骨ラーメンを食べる!という選択肢も認めたい…ということです。(もちろん程度問題というのはあると思い…

無症状でも治療をする理由2

前回からの続きです。 糖尿病や高血圧の患者さんは動脈硬化を防いで心筋梗塞や脳梗塞を予防するために生活習慣を改善し、治療薬を内服しているという話でした。 しかし自分が指導する立場でありながら、こんな思いが多少なりともわいてくることがあります。 …

無症状でも治療をする理由

症状がなくても病名がついて治療薬を飲んでいる人がいます。 高血圧、糖尿病、脂質異常症などがそうですね。 でもどうして薬を飲んでいるのでしょうか。別に痛いわけでも苦しいわけでも、かゆいわけでもないのに。 なぜ医師も治療をすすめるのか。 治療も薬…