家庭医について:生物心理社会モデル2

生物心理社会モデルは生物医学モデルと逆方向の捉え方もするのでした。
 
生物医学モデルが人間をより小さい単位で見て病気の原因を解明しようとしたのに対し、生物心理社会モデルは逆にそれをより大きな単位で病気が与える影響や関係性の変化をみようともします。
 
例えば、一個人としての鈴木さん。甘いものが好きな糖尿病の60歳男性。特に自覚症状はないが、好きなおやつを多少制限しています。それをズームアウトしてみると、家族の中の鈴木さんが見えてきます。58歳妻と2人暮らし、30歳長女と27歳長男はそれぞれ働いて独り暮らしをしています。妻は糖尿病の夫の食事についてカロリーを考えて作っています。長女もネットで調べては色々とアドバイスをくれます。
さらにズームアウトしてみましょう。一定の社会集団の一員としてみることができます。例えば鈴木さんは電機メーカーの管理職として働いています。仕事は忙しく簡単に入院できるような環境ではありませんから、糖尿病が悪化して入院をするような事態は避けたいところです。
また社会における糖尿病の影響としては、それによって保険に入りにくくなったりと様々な影響があるでしょう。
さらに国家レベルで糖尿病を考えたとき、それは糖尿病政策を考えることにもなるでしょう。
 
このように生物心理社会モデルでは、糖尿病を個人の経験や行動の変化としてとらえたり、家族の中の役割の変化としてとらえたり、社会の中に与える影響を考えたりします。対象をズームアウトして、より大きな関係性の中で考えるわけです。今風にいうとgoogle mapでストリートビューをみるのではなく、逆に引いてより広い範囲を考えていくようなイメージでしょうか。
 
また各レベルでの捉え方は相互に影響し合っています。例えば仕事がうまくいかなかった⇨やけ食い⇨血糖値の上昇…やや単純な例ですが、仕事上の問題が臓器・細胞レベルの問題にも影響しているということです。
 
つまり糖尿病を持つ患者を、生物・心理・社会的な要因を含むシステムの異常としてとらえます。そしてそのような関係性を含めて有効なケアを考えていく方法が生物心理社会モデルによるアプローチなのです。