風邪の正体

寒い日が続いています。
冬になるといわゆる風邪の患者さんは増えます。患者さんの中には「風邪をひいちゃって」といって受診される方も多いです。
しかし、そもそも「風邪」ってなんでしょうか。
 
患者さんが「風邪」というときに詳しく話を聞くと、その症状は喉が痛い・咳がでる・鼻水がでる、の3つに集約されることが多いです。これら3つの全てがそろっているか、そのうちの1つだけ、あるいはいずれか2つという場合もあります。
また何となく体全体の調子が悪い場合に「風邪」という病名を自らつけている方も多いです。
 
「風邪」の明確な定義が何なのか、なんて話をするつもりはありません。患者さんが「風邪」という言葉を使うとき、その「風邪」の中身(症状や経過)は患者さんによって様々なのですが、おそらく患者さんにとっては軽い病気という認識ではあると思います。
 
それはその通りで、「風邪」は基本的に短期間で自然軽快する、というのが特徴のひとつです。ですから、医師が「風邪ですね」と診断するということは「特に心配することはありません」といっているに等しい。そして患者さんもそれを確認したくて医療機関を受診しているという面もあるでしょう。
 
では風邪の正体は何なのか。
医師が「風邪」といったとき、その多くは「ウイルス性上気道炎」のことを言っています。ウイルスというのは非常に小さな病原体で、有名なものではインフルエンザウイルス、最近ではエボラウイルスを耳にしますね。
そのウイルスが喉や鼻にくっついて色々な症状を引き起こす、というのがいわゆる風邪のメカニズムです。
そうするとウイルスを撃退する薬があれば風邪を治すことができるということになりますが、残念ながらウイルスそのものをやっつける薬はほとんどありません。例外的にインフルエンザウイルスには薬はありますが、それ以外の風邪の原因となるようなウイルスには治療薬はないんです。
しかし治療薬がないからといって困ることは全くありません。なぜならそれらのウイルスは自然と排除されるからです。つまり何もしなくても自然に治っていくということです。
 
ですから「風邪」という診断はとても大事になります。
風邪であれば短期間で自然に治っていくという経過が予想できますから、医師としても安心です。患者さんも安心してもらって大丈夫です。
 
ただ自然に治ると言っても、風邪と言われて薬を出されることは多いでしょうし、薬が欲しくて来ている患者さんも多いです。
風邪薬とは風邪を治すのではなかったのか?と思われる方もいるかもしれません。
でも実はそうでもありません。
 
(続く)