不要な救急搬送を減らすことができるのは家庭医だろうと思います ①

家庭医として患者さんと関わっていく中で、病気とは何か・健康とは何か・死とは何か…など様々なことを見つめ直す日々です。
 
少し前になりますが、「救急搬送有料化を検討」という記事をみました。
救急出動件数の増加と、その中でも実際には軽症の要請が多いこと。そのために本当に救急搬送が必要な重症患者への対応が遅れること、そして財政的な問題。このような背景から、不要な救急要請を減らすための対策の一つとして有料化の議論となったようです。無料で簡単に呼べてしまうのが安易な救急要請の原因なのだから、お金をとることで抑止力になるだろう。そして経済的な問題も解決できる。そういう発想なのでしょう。
 
この件についてはネットで検索するとそれなりに出てきますが、だいたい有料化のメリットデメリットについての議論がほとんどだと思います。
ここでは、有料化以外に不要な救急要請を減らす方法はないのか考えたいと思います。
 
タイトルにもあるように、私は不要な救急搬送を減らすことができるのは家庭医だろうと思っています。もちろん、家庭医が全てを解決するわけではありませんが、大きく貢献できるでしょう。
こんな例があります。これは実際に経験した例です。
 
85歳で一人暮らしの女性がいました。この方は特にどこか病気があるわけではないのですが、頭痛・しびれ・なんとなく気分が悪い・額の異常感覚…などで頻繁に時間外受診をしていました。救急要請も頻回でした。そしてその度に血液検査や頭部CTなどの画像検査をうけて異常がないですよと言われ帰宅するということを繰り返していました。独居による不安が背景にあるのでしょう、診療所を受診しては寂しさや不安を訴えていました。
 
さて、「不要な救急要請」の具体的な中身の一つはこのような不安を抱える高齢者です。
この女性が救急要請をせずにいられるようにするにはどうしたらよいのでしょうか。