インフルエンザの診断と検査と私

インフルエンザが流行しています。
 
インフルエンザの診断には、迅速キットが使われています。鼻の中に細い綿棒のようなものを突っ込んで検査する、あれです。
 
患者さんは高熱がでて医療機関を受診します。そうすると迅速検査をされ、結果が陽性だとインフルエンザですね、といわれインフルエンザの診断となります。
…だいたいがこのような流れですから、インフルエンザの診断には迅速検査が絶対必要だと思っている方も多いです。
しかしそんなことはありません。迅速検査なしでも診断することはあります。
それは症状や経過から明らかにインフルエンザであると判断できる場合です。
 
具体的には、38.0℃以上の高熱があること・インフルエンザと診断された人と濃厚な接触があり、発症のタイミングが潜伏期間を考慮して矛盾しないことの2点がそろえば流行時期におけるインフルエンザの可能性はかなり高いでしょう。もちろんその他に疑わしい疾患がないことも大事です。そして喉が痛いなどの上気道症状や筋肉痛・関節痛などの全身症状があるとよりインフルエンザらしくなります。個人的には結膜の充血(白目の部分が赤くなる)がある人はインフルエンザであることが多いような気がしています。ちなみに、ここでいう濃厚接触とは家族や同じクラスで仲の良い友達、のような関係を想定しています。
 
要は、2日前にインフルエンザの診断をうけた子供のお母さんが39℃の高熱と全身の筋肉痛で受診した、というような場合です。
こんな人がきたら、誰でもインフルエンザだなと思いますね。そうなのです、十中八九インフルエンザで間違いないのです。
ではこのときに迅速検査をする意味はあるでしょうか。
 
この場合、検査する意味はありません。なぜなら検査の結果に関わらず、診断はゆるがないからです。
え、検査が陰性でも診断してしまっていいの?と思う方がいるかもしれません。
いいんです。検査が陰性でも診断できます。でも逆に、陰性でも診断するなら、検査してもしなくても一緒ということになります。つまり迅速検査をする意味はないのです。
 
これにあまり納得できない人は、おそらく検査は100%正確であるという前提があるからではないかと思います。
しかし100%正確な検査というのはありません。それはインフルエンザの検査も例外ではありません。検査をして陽性でもインフルエンザでない可能性もあるし、逆に陰性でもインフルエンザの可能性はあります。
あとは程度の問題です。検査の正確さ・信頼性と、検査以外の情報でのインフルエンザらしさ、この二者を比べて判断します。
 
2日前にインフルエンザの診断をうけた子供のお母さんの場合は、検査以外の情報のインフルエンザらしさが検査の正確さを遥かに上回るのです。つまり検査するまでもなく、インフルエンザらしいということです。
だから検査をする意味はありませんし、検査なしで診断できるのです。
もちろんこれは医師の判断ということになりますが…。
 
検査というのはインフルエンザ迅速検査に限らず、その正確さの程度は色々です。ですから、検査結果をどう判断するかというのは実は検査以外の情報が非常に重要です。
検査の数値や、陽性・陰性などの結果だけにとらわれてはいけないということでした。