診断はつかないけど

「時間」がもっとも効果のある薬なのかもしれません。
 
患者さんが何かに困って受診します。
例えば、熱が昨日からある。37℃台後半の熱だけれど、平熱は35℃台ということもあって結構つらい。熱以外に何か症状がありますか、と聞いても何もない。咳・鼻水はないし、喉も痛くない。頭痛や腹痛もないし、下痢や嘔吐もない。どうやら熱以外に症状がない。診察してみても、特に気になる異常はない。でも熱は37.8℃あって、患者さんも何で熱がでているのか気になり、治してほしいと思っている…。
こんなことがたまにあります。
診察する側としては、熱がでていれば体のどこが熱の原因となっているのかを探そうとします。そのために症状や経過を聞いたり診察をするわけです。例えば喉が痛くて咳や鼻水もでるのであれば熱の原因は喉でしょうし、お腹が痛くて下痢をしているのであれば、お腹からの熱だろうと思います。結構単純です。
でもたまに何も症状がなくて熱だけ、という場合があります。これは困ります。診断がつかないからです。
診断がつけば、治療も決まりますし、経過も予想がつきます。「これは喉からの熱でしょうね。まあいわゆる風邪です。体全体の調子は悪くないですし、食事水分もとれていますから、数日で自然に良くなっていくと思います。症状を和らげる薬を出しておきますね。」などと説明して診察が終了します。
では診断がつかない場合はどうするか。
 
「時間」を使います。つまり経過を見るということです。
これはかなり有効な手です。もちろん、解熱剤などの対症療法はしますし、経過をみられるくらい患者さんの状態は悪くないという前提ですが。
経過を見ていくうちに、つまり時間がたって初めて他の症状がでて診断に近づくことがあります。
また、経過を見ていたら自然に良くなってしまった、そして結局診断がつかなかった、なんてことも珍しくありません。
特に診断ははっきりしないけれど自然によくなるパターンはそれなりにあります。自然に下がってしまう熱。よくわからない手のしびれがあったが自然に改善。…など色々です。
このような場合は大抵心配はいりません。そのまま様子を見ていればいいのです。実際、何か調べようと思っても治ってしまっていては調べようがないというのもありますが。
 
せっかく医療機関を受診したのにすぐには診断がつかないこともあります。でもそれは「時間」という薬を使っているところなのかもしれません。
そういえば「日にち薬ですね」と言われる患者さんもいらっしゃいましたが、まさにそのとおりだと思います。