アッヘンバッハ症候群という病名がついています

家庭医として患者さんと関わっていく中で、病気とは何か・健康とは何か・死とは何か…など様々なことを見つめ直す日々です。
 
久しぶりの投稿になりました。
さて、診療所にくる患者さんは色々な訴えがあります。
今回はまだあまり知られていない病気。
ある日の外来では、「右手が急に痛っ!となってそのあと痛かった部分が内出血するんです。」という訴えで患者さんが受診されました。
右手をみると、なるほど親指の付け根のあたりに内出血のあとがあります。今はもう痛みはないし、内出血のあとも色が薄らいできているようです。その他に症状はなく、特に生活に支障をきたすほどでもない。
 
この症状にはAchenbach症候群という名前がついています。アッヘンバッハと読みますが、これは最初にこの病気を報告した医師の名前です。
Achenbach症候群は、何の誘引もなく突然手に痛みを生じ、内出血ができて、その後自然軽快するという経過をたどります。繰り返すことはありますが、何か重篤な病気が隠れているサインではありませんし、ほっておくと悪化して手遅れになるということもありません。原因はよくわかっていませんが、特別な治療は必要ありません。
 
病名がついて、大丈夫ですよと言われれば何てことはない症状だろうと思います。
ただこれが有名な病気ではなく医師の中でもまだそんなには知られていないのです。ひょっとしたら病名ははっきりいわれていないが「心配ないですよ」で経過観察になった人も多いかもしれません。
そうすると心配な人はあちこちの病院にいって検査をうけて…何てことがあるのかもしれません。
 
診断名がつくということは大事なことだと思います。
名前がついていて「大丈夫」といわれるのと、なんだかよくわからないけれど「大丈夫」と言われるのではだいぶ違いますよね。
医師としてはできるだけ幅広い知識をもって、患者さんの訴えることに正しく病名をつけることはとても大切なことだろうと思います。
一方で、やはり原因のよくわからない症状・名前のつかない症状も必ずあります。特にそれが自然に治ってしまうような場合は結局正体不明のままであることは多くなります。でもその場合はたいてい問題のないので、そのまま様子を見てもらっていいのです。
診療所には色々な患者さんが来ます。病名がつくこともありますが、つかないこともあります。どちらにしても患者さんに安心して帰ってもらえるようにしたいと思っています。