家庭医について:生物心理社会モデル

家庭医が病気をとらえる考え方に、生物心理社会モデルという枠組みがあります。
これは生物医学モデルに対比する疾患モデルとして提唱されたもので、1977年にEngelという人が提唱しました。
今回は、生物医学モデルと生物心理社会モデルについて。
まずは生物医学モデルからです。
 
生物医学モデルではある病気を持った人に対してその個別性・具体性を排除し、人間を臓器レベル・細胞レベル、さらには分子レベルでとらえ、原因を特定してようとします。そしてその病因を排除あるいはメカニズムを正常化することにより病気を治そうとするものです。
例えば、糖尿病は血糖が上昇し、様々な臓器に障害をもたらす病気です。その血糖上昇のメカニズムを細胞レベルで解明し、その原因となるメカニズムに対して作用する薬を開発しようとするアプローチは生物医学モデルです。
そこには糖尿病、膵臓、○×細胞、△受容体、などといった用語はでてきます。しかし例えば40歳男性の糖尿病、一人暮らしで外食が多い人の糖尿病、高齢・独居で内服管理が難しい人…などなど個別具体的な要素はいっさい出てきません。当然です。これらの具体的な状況を排除して考えることが重要です。
このように個別具体的な状況を排除して臓器レベル・細胞レベルで病因を解明するアプローチをしたからこそ全ての糖尿病患者に有効な薬ができたわけで、この生物医学モデルの考え方が疾患の治療にもたらした恩恵は計り知れないものがあると思います。現在医療機関で処方されている西洋医学の薬はこの生物医学モデルアプローチがもたらした成果であるといっていいでしょう。
 
しかし一方で、人間が持つ病気へのアプローチはそれだけはないことも事実です。
 
生物医学モデルが排除した人間の個別性・具体性も大事です。そして病気を持った人間を、臓器レベル・細胞レベルとは逆方向の捉え方、すなわち、家族の中の人間、地域・社会の中の人間として捉えることもできます。
それが生物心理社会モデルです。