家庭医の診療って?転んだ時の例

家庭医として患者さんと関わっていく中で、病気とは何か・健康とは何か・死とは何か…など様々なことを見つめ直す日々です。
 
「20141214 家庭医の得意とする問題」でも出しましたが、”転倒”は家庭医の診療を説明する上でわかりやすい例です。もう一度違う見方で考えてみたいと思います。
 
「よく転びます」といって、ある科にかかるとどのようになるかという例
患者さんは78歳の男性です。
 
「よく転びます」 整形外科→「骨折はありませんよ。よかったですね。お気をつけて。」(ついでに骨粗鬆症の話が始まるかもしれません)
「よく転びます」 外科→「傷は浅いので縫う必要はありませんよ。骨折もないようです。」
「よく転びます」 脳神経外科→「頭部CTでは異常ないようです。お大事に。」
「よく転びます」 循環器科→「心臓の検査では異常はないようです。」
「よく転びます」 神経内科→「歩行は問題ないようです。うちの科の病気はなさそうです。」
「よく転びます」 内科→「内科的には問題ないです。」
「よく転びます」 家庭医→「転んだ時の状況は?内服は?家の様子は?ご家族は?」
 
…さて、よくよく話を聞くと、この男性は夜間に転倒することが多いようです。最近、慢性心不全で通院していたクリニックで利尿剤(心不全の治療薬で、体の余分な水分を尿として体外に出すための薬=尿がでやすくなる)をたされ、トイレが頻回になったとのこと。しかも最近長男夫婦と新しい二世帯住宅で同居生活をし始めたばかりで暗い夜は勝手が分からずトイレまで行くのが大変だったとのこと。
 その後、服薬に関する調整をお願いし、長男さんとも話をして夜間の照明やトイレまでの通路の安全確認をしてもらいました。
 こうすることで以前のように転ぶことはなくなったとのことです…。
 
・・・少し家庭医よりに書き過ぎかもしれません。
実際には上記の神経内科のあたりでパーキンソン病等がみつかるかもしれませんが、本当にそうでないことも多いのです。
 家庭医の診療スタイルのことを少しわかっていただけたでしょうか。