家庭医のアプローチその2 働き盛りの患者さん③

家庭医として患者さんと関わっていく中で、病気とは何か・健康とは何か・死とは何か…など様々なことを見つめ直す日々です。
 
さて前回は、内科医のアプローチにはなかった会話の背景にある家庭医の思考を明らかにしました。
それは家庭医療のもつ理論的基盤に基づくものです。
 
その中でも、今回考えたのは、患者さんのライフサイクルです。40代の働き盛りの男性がどのような社会背景を持っているかということです。
これは特に家族ライフサイクルといって、家族の発達段階ごと(結婚前の成人期、新婚夫婦の時期、乳幼児を育てる時期、…など)にそれぞれが担う役割や直面する課題について考えてアプローチすることもあります。今回はそこまでは踏み込んでいませんが。
 
また情報収集の段階では、この患者さんが診療所に「継続して」かかっているということも大切なポイントになっています。
家庭医療では「継続性」が大切な要素ですが、今回もこの患者さんが継続してかかっていたからこそ、その受療パターンがわかったのです。
「継続性」というと「定期的に通院していること」を想像するかもしれませんが、この患者さんのように風邪などの時だけに不定期にかかる場合でも継続性はあると考えます。
継続性というのは、仮に不定期であっても何かあればまず相談する診療所として、この患者さんにとっての「かかりつけ」であるということです。
この患者さんと診療所に継続性があったことが今回の診療に非常に有用な情報をもたらしたことがわかっていただけたと思います。
 
今回は家庭医のアプローチすなわち家庭医医療のもつ理論的基盤として、患者さんのライフサイクルを考えること(これは家族や社会背景を考えることにつながります)、そして家庭医療の要素として重要な「継続性」について、症例を通じて紹介しました。