ただ見守る

家庭医として患者さんと関わっていく中で、病気とは何か・健康とは何か・死とは何か…など様々なことを見つめ直す日々です。
 
生命は全て生きようとします。
人も全て生きようとします。
ミクロレベルでもそうです。恒常性を保つというが、人はそのようにできています。
だから最後まで生きようとするのは当然。
最期の場面でただ見守るだけでいることがなかなか難しいのも当然のことでしょう。
 
認知症と衰弱で食事を食べるのも難しくなっている高齢者に対して、何もせずに見ているだけということができず点滴を希望する家族。
癌末期でやはり食事は食べられず、むくみも出てきている患者に最期まで点滴やめる決断ができない家族。
医療者側としたら、もうその必要は無いだろう、ただ穏やかに見守ってあげるのがよいだろうと思う場面もあります。それは距離感が遠い他人だから思えるのです。しかし家族は違います。自分自身に生きようとする本能があるから、旅立とうとする家族にもその気持ちを重ねてしまいます。理性では、もう十分だと思っているかもしれませんが感情がそれを拒みます。
そんなとき、医師の言葉がきっかけになるかもしれません。救いになるかもしれません。
あとは穏やかに見守ってあげるのが本人にとって一番ですよ、と。