医者はわかってくれない、と思われている?②

家庭医として患者さんと関わっていく中で、病気とは何か・健康とは何か・死とは何か…など様々なことを見つめ直す日々です。
 
(前回からの続き)
なぜ患者さんは点滴をしてほしいのか。
医療者はなぜ、点滴をしたがらないのか。
私は医療者ですから、点滴をしたがらない理由はわかります。
ひとつは、点滴の中味を知っているから。そしてそれは口から水分をとることができれば必要の無いことであると思っているから。
もうひとつは、点滴の害を考えるから。点滴をすることは針を刺すことですから痛みを伴いますし、点滴の失敗により何度も痛い思いをしたり腕が一時的に腫れたりすることもあります。点滴をしなければ絶対におこらないことです。中には点滴をすることで体に負担がかかり、状態を悪化させてしまうような病気もあります。
また時間的・場所的・マンパワー的問題もあります。
点滴をすることは意外と人手と時間と手間をとります。点滴を間違えずに準備して、針を刺して固定して、点滴をしている間の観察も必要です。ベッドをひとつ確保して1時間程度はそこで過ごしてもらわないと行けません。特に救急外来で混雑した状況であったり、しかも人手も多くない中であれば、点滴をする患者さんが1人増えることは医療スタッフにとって負担になります。もちろん、必要なら何の問題もありません。負担だからやりたくないわけではないのです。必要なことに力を注ぎたいということです。これは医療事故予防という点からも重要なことだと思います。
このようなことはいわば点滴のデメリットと言うことができると思います。
 
ではどんなときに点滴をするのか。それはこれらのデメリットを上回るメリットがある場合ということになるでしょう。最もわかりやすいのは、経口摂取が全くできないときで、血圧が下がる等の明らかな異常がある場合。このときは点滴をすることで状態改善が期待できますし、そもそも点滴をしながら原因精査をしないと命に関わるかもしれません。患者さんが希望するかどうかに関わらず点滴をすることになるでしょう。(状況によっては入院です)
 
悩ましいのは、全く飲めないわけではないけれど体のつらさはあって何とかしてほしい時。
悩ましいとは言ったものの、この場合の医療者側のスタンスは「メリットよりもデメリットの方が大きいので点滴はしない」と決まっています。飲めるわけですから、点滴の必要性はないと判断されるのです。
 
しかし、それだけでいいのか、とも考えます。
 
(続く)