患者さんを支える家族を支えたい

家庭医として患者さんと関わっていく中で、病気とは何か・健康とは何か・死とは何か…など様々なことを見つめ直す日々です。
 
家庭医は患者さんだけでなく、その人に関わる家族のことも考えます。
例えば認知症患者さんを支える家族は特有の大変さがあり、ストレスも大きいのです。
認知症の人はすぐに忘れてしまうため何回も同じことを言わなくてはならない。何度も同じ件で電話をかけてくる。
こちらの理解できない言動をする。夜目が覚めると、まだ暗いのに「朝だ」といって窓を開けようとする。
それらが病気のせいだとわかっていても、わき上がってくるイライラの感情は如何ともしがたく、ついおこったり感情をぶつけたりしてしまいます。そして後で後悔。
私ができるのは一般的な知識をもとに対応方法についてご家族と一緒に考えたりアドバイスをすることだけですが、実際に身内を介護したことはありません。介護者の視点で同じ苦労を分かち合うことはできません。
 
最近認知症を介護するご家族さんから何回か聞かれるのは、「他の方は一体どうしているのでしょうか」ということです。自分はついイライラして冷静な対応ができないことがあるけれど、他の人はどうだろうか。どうやって対応しているのだろうか。
そんなとき、私からは「他の家族さんも同じように悩まれていますよ」とか「こんな風にしている人もいます」みたいなことは話します。しかしあくまで人のことを話しているだけで、生の声とは違います。
 
本当は介護に携わり悩んでいる人同士が実際に会って、色々な悩みや情報を共有して共感して生かしていくことができればいいのだろうと思います。話をして同じようなことで悩んでいるとわかったり、お互いにつらさを話したりするだけでもその後の気の持ちようが違ってくるでしょう。
 
今は地域によっては認知症カフェといって、そのような場を提供する取り組みをしているところもあります。
そういった場があることも介護者を支援していく上で大切だろうと思います。
今後さらに高齢者や認知症患者さんが増えていくということは、介護に携わる人が増えていくということでもありますから。