ノロウイルスは有名だけど
家庭医として患者さんと関わっていく中で、病気とは何か・健康とは何か・死とは何か…など様々なことを見つめ直す日々です。
最近私の外来では胃腸炎の患者さんが増えてきたような印象です。
特に牡蠣を食べた後に嘔吐下痢腹痛を発症した人を診察したり、話を聞くようになりました。
ウイルスというのは非常に小さな病原体のことですが、有名なのはインフルエンザウイルスでしょう。
ノロウイルスによる食中毒や高齢者施設での集団発生などの報道がなされているからかも知れません。
そのせいか、「ノロウイルスでしょうか」とウイルス名指し(笑)で心配される人もいます。
ノロウイルスかどうかの検査をしないんですか、と聞く人もいます。
ノロウイルスであってもなくても、その後の行動に全く変わりはないからです。
ノロウイルスであろうとなかろうと、治療法は一緒です。感染予防対策も一緒です。
感染対策には手洗いが重要なことも一緒です。
ですから通常の診療所ではウイルス性胃腸炎の病原微生物について調べることはありません。検査をする意味が無いからです。
病原体の名前がはっきりすると、その病気を特別視してしまう傾向にありますが、ノロウイルスだろうとロタウイルスだろうと、サボウイルスだろうと一緒なんです。(感染力の強さに違いはあるでしょうが、個人レベルで言えば大差のないことです)
さて結論ですがウイルス性胃腸炎は基本的には自然に治っていくのを待つしか無い病気です。逆に言えば自然軽快がかなり期待できる病気です。つらい症状(吐き気、腹痛など)はある程度薬で緩和しながら少しずつ水分をとって、治っていくのを待つという対応でよいです。無理して固形物を食べる必要はありません。
そして、通常は病原体を特定することにメリットはありません。原因をつきとめたいという気持ちもわかりますが、それも治ってしまえばどうでもよくなってしまうでしょう。ノロウイルスのせいかなあ、くらいに思っておけば良いのではないでしょうか。