ポリファーマシーについて

最近、医療者の中でポリファーマシーということが話題になることが多くなりました。
一般の方にはまだあまり馴染みがないかもしれませんが、ポリファーマシーとは「多薬剤処方」のことです。ポリとは「多くの」、ファーマシーとは「薬」という意味です。
 
どうして話題になるかというと、ポリファーマシーはよくないということです。
つまり薬の飲み過ぎはよくない。
薬には副作用や相互作用がありますから、薬が多ければ多いほど副作用が増え、相互作用にいたっては予測不可能でしょう。4剤以上の内服は薬の種類に関わらず転倒リスクを上げるという研究もあるくらいです。
やはり薬は少ないにこしたことはない。
 
しかし実際には本当にたくさんの薬を飲んでいる人もいて10種類以上なんて人もいます。特に高齢者はポリファーマシーの人が多いですね。
高血圧、糖尿病、脂質異常症、便秘、不眠…これらの病名があって1種類ずつ内服しているだけでもすでに5種類です。どれも比較的よくある病気ですから、あっという間に10種類くらいはいくわけです。
 
もちろん必要な薬は飲まなくてはなりませんが、それでも不要な薬がないかどうか常に確認していく必要があります。
そして例えば10種類も薬を飲んでいる人は、その中に不要な薬があることが多いです。
 
ではどうしてポリファーマシーになるのか。その原因については医師と患者の両者に原因があると思います。
 
以下、岩田健太郎著「99.9%が誤用の抗生物質」からの引用です。
 
ポリファーマシーが起きる原因として考えられるのは、次のようなものです。他にももっとあるかもしれません。
 
1. 病気を治すのではなく、検査の数値そのものを医者が正常化しようとする。異常値は全部直さないといけないと信じている。
2. (1につながりますが)臨床的アウトカム(成果)をよく吟味していない。患者さんに利益があるのか、ないのかをよく考えていない。
3. 薬のリスクを吟味していない。
4. 薬の相互作用(複数の医薬品が起こす副作用)を吟味していない。
5. 他科の診療に関心がない。お薬手帳をチェックしていない(薬剤師も)。
6. 患者が薬をやたら欲しがる。
 
引用終わり
 
1-5はしっかり肝に銘じておきたいところです。
6については、もちろん患者さんにもできるだけ薬を減らしたい人もいれば、そうでない人もいます。
薬を飲みたい患者さんについては、薬を減らすのはなかなか大変だなと感じます。
長年薬を飲み続けている人は、それらがなくては今の状態が保てない、薬を飲んでいるから大丈夫なんだと思えて来てしまうのでしょう。一種の依存状態でもあると思います。
しかし実際にはそうでもなくて、何かをきっかけに中断したときに案外大丈夫だったと気づくこともあります。
そうなると薬を減らしやすいですが、減らしてみたらやはり調子が悪くなったので再開するということも結構あり、なかなか難しいのです。
 
まずはポリファーマシーという問題を知ってもらい、薬は最小限がいいんだと思ってもらえることがスタートでしょう。