医療って科学的?①

家庭医として患者さんと関わっていく中で、病気とは何か・健康とは何か・死とは何か…など様々なことを見つめ直す日々です。
 
EBMという言葉があります。
Evidence based medicine の頭文字をそれぞれとってEBM(イービーエム)です。
日本語では「根拠に基づいた医療」と訳されることが多いと思います。
「根拠」とは科学的な研究結果のことを指します。つまりEBMをもう少し長く訳すと、科学的根拠に基づいた医療ということになるでしょうか。
さて、この言葉を初めて知った方、どういう印象でしょうか。
私がこの言葉を初めて聞いたのは10年以上前になるでしょう。そのとき同時に上述のような日本語訳を知り、軽い衝撃を受けました。
「え、なんで今更?」という衝撃です。
仮にも医学は科学でしょう。その医学が元になっている医療が科学的根拠に基づく、などということは言われなくても当然でしょう。それとも、まさかこれまでそうでなかったとでも??
 
…実はそうでも無かったということです。
病気はたくさんあり、それに対する検査や治療も様々です。それらは特にEBMという考えが出る前は、個人の経験や慣習、医師全体としてなんとなくよいだろうと思われていること、などを根拠(?)に治療(薬の処方や手術)がされていたということなんです。
医学が発達する前は、それぞれの医者がそれぞれの経験からこの症状にはこの薬というように、ある意味適当な(良い意味でも悪い意味でも)治療をしていたのでしょう。
昔はそれでよかったかもしれませんが、この科学の発達した現代においても、そうだったのです。
しかもEBMが声高に言われるようになってから、まだそれほど時間も経っていません。(日本では10年程度かもしれません)
 
ここまで聞いたら、良くそれでこれまで何事もなく医療がなりたってきたなと思うかもしれません。
要は江戸時代とそんなに変わらないんでしょ?と。
(続く)