心臓の病気なのに脳が心配?④

家庭医として患者さんと関わっていく中で、病気とは何か・健康とは何か・死とは何か…など様々なことを見つめ直す日々です。
 
話が長くなりました。
これまでの話をまとめると、
心房細動→不規則な心臓の動き→血液の流れが滞る→血の固まり(=血栓)ができやすくなる
となります。
そして、できた血栓が脳の血管をつまらせて脳梗塞になるのです。
ではこの血栓ができるのはどこかというとそれは心臓の中なんです。不規則な心臓の動きで血液の流れが滞り血栓ができるのは心臓の中であり、そこから脳に到達してしまいます。
 
ここまでわかっていたら、それを防がなくてはなりません。
もちろん、それを防ぐ薬があります。それは血の固まりをできにくくする、すなわち血が固まりにくくなる薬になります。
ただ血が固まりにくくなるということは、出血しやすくなることにもなります。実際、この手の薬には出血という副作用があります。ですから、心房細動の人全員が薬を飲むべきではない、ということです。
薬を使うと脳梗塞は予防できるかもしれないけれど、出血のリスクも高くなるので、心房細動であっても全員薬を飲めばいいわけではないのです。
脳梗塞のなりやすさと、薬を飲むことによる出血のリスクのバランスを見なければならない。
そう、心房細動だからといって全員が脳梗塞になるわけではないというのも重要ですね。
物事の仕組みを説明されると、絶対そうなる、という気になってしまいますがそんなことはありません。人間の体ってわからないことだらけです。一応現代医学で説明できる範囲での仕組みはありますが、それが全てでは決してありませんから。
もちろん心房細動とそうでない人がどれくらい脳梗塞のなりやすさに違いがあるのか、血を固まりにくくする薬を使うことでどれくらいリスクが下がり、どれくらい出血しやすくなるのか、などは色々な研究でわかっています。
ですからそういった知見に基づいて医師は心房細動の患者さんに薬を処方したり、しなかったりしています。
 
以上が、心房細動と脳梗塞の関係についての説明です。
 
しかし、やはり病気のことを自分なりにわかりやすく説明しようとすると非常に話が長くなり、かえってわかりにくいかなとも思います。また話をしたとしてもそれを理解できるかどうか、あるいは理解したいかどうかという問題もあります。
もちろん患者さんに治療をするのであれば、どういう理由で治療をするのか、なぜ必要なのかは伝えた上ですべきだし、していると思っていますが、実際にはそうでもないことも多いようにも思います。
これは人にもよるし、状況にもよると思いますが、まだまだ模索中のところです。