医療って科学的?③

家庭医として患者さんと関わっていく中で、病気とは何か・健康とは何か・死とは何か…など様々なことを見つめ直す日々です。
 
(前回からの続き)
でも実は違います。確かに理屈だけ考えるとそう思えるのですが、実際には必ずしもそうではないのです。
おそらくこれが最も重要な点だと思います。「ことはそう単純ではありません」といった意味はここにあります。
 
繰り返しになりますが、血圧が高いことが動脈硬化のリスクである→その逆に「血圧を下げれば動脈硬化のリスクが下がり、脳卒中や心疾患を予防できる」ことは明らかではありません。
 
これが例えば「エアコンのフィルターを掃除しないと暖房効率が悪くなる」という問題であれば、フィルターを掃除することで暖房効率が改善することは明らかでしょう。
エアコンは人間が作った物ですから、その構造は全てわかっています。その上で、原因と結果が1対1対応するので非常にわかりやすいのです。
 
しかし人間は違います。人は、人間の体のことを良くわかっていません。極端な話をすれば、人の体はまだまだブラックボックスなんです。ですから、薬を作ってみたはよいが、その薬が本当に思ったような効果を発揮するのか、使ってみないとわかりません。極端な話ですが、本当の話です。
 
そこでEBMがでてきます。EBMについて勉強して自分が注目したことの一つは「で、実際どうなの?」という本来は考えるべき疑問について検討しようとする姿勢です。
血圧は下げるけど、実際どうなの?それで何がよくなるのか?
血糖は下げるけど、実際どうなの?どういういいことがあるのか?
こういったことをしっかり考えなくてはいけないと思ったのでした。
 
もちろん様々な研究により本当に思ったような効果(例えば脳卒中を予防するとか)を発揮すると確かめられ、使われている薬もたくさんあります。
でも身近な薬でも以外にそうでもない薬もあります。そんなものなのか、とがっかりすると同時にそんなものだよな、と納得する気持ちにもなります。
 
医学は科学的に解明されたもの、絶対的なもの、と考えている人からしたらちょっと裏切られたように思うかもしれません。
しかしそんなものです。まだまだわからないことだらけです。
 
言いたいことは、医学的に正しいとか、科学的根拠があるとか、そんなことはなかなか言えないということ。
だからスタンダードといわれている治療にも常に疑問を持ち続けたいと思います。(これは医療者としての立場ですが。)患者さんからしたら、こんな不確かなことでは困ると思うかもしれません。
でも医療にはまだよくわからないことが多く、そのような中で最善と思われることをやっているという認識はあったほうがいいように思います。